先週、垂水区の福田川中流にあるあじさい公園のビオトープの水路を補修しました。その際に、公園の臨時駐車場脇でアルゼンチンアリを発見しました。在来のアリと比べて倍ぐらいの高速で動き、長い列を成していました。
(撮影:兵庫県立人と自然の博物館 三橋先生)
(撮影:小林功敬さん)
本日、さらに生息状況を確認し、対策を考えるために、兵庫県立人と自然の博物館学芸員の三橋先生、兵庫県立大学自然科学研究所の特任教授で、アルゼンチンアリの生態と駆除の権威の橋本先生や県の関係者があじさい公園に来られ、案内しました。
その結果、私たちが発見した場所に留まらず、あじさい公園のビオトープを始め、公園一円、さらには公園の周囲にまで広く、アルゼンチンアリが生息し、その巣は互いにつながって大きなコロニーを形成していることを確認しました。公園の一角には長さ20メートルほどの市民花壇があります。四方をレンガで固められた盛土の上に、地元の方が大切に花を咲かせています。そのレンガの目地や水抜きのパイプにもアルゼンチンアリが群がり、列を成していました。バーナーで行列の一部を炙ると、1分も経たないうちに、近くの水抜き穴から卵や幼虫を抱えたアルゼンチンアリの大群が湧き出てきました。橋本先生によると、その花壇だけでも1千万匹ぐらいが生息している、とのことです。
付近の川べりの住宅街を歩くと、あちらこちらに行列。新しめの集合住宅の中には、側溝から地面、建物の壁面を伝って、アルミサッシの中へと列を成している建物もありました。すでに屋内で被害を及ぼしていると考えられます。老人ホームでは施設長にお話を伺うことができました。以前からアリが建物に侵入するのに悩まされていて、キッチンや居住者の居室にまで入ってきているそうです。スズムシの鳴き声がうるさいので一晩建物の外に出しておいたところ、翌日、アリが押し寄せてきて全滅した、というお話もありました。
アルゼンチンアリの学名は「水辺のアリ」とのことです。兵庫県下で駆除作戦が繰り広げられている大阪空港、伊丹市でも、主な生息域は川沿いなのだそうです。あじさい公園は、まさに水辺で、草が生い茂ってエサが豊富で、おまけに護岸の石垣が巡っており、アルゼンチンアリの原産国に似た環境で、彼らにとってはパラダイスとのことです。もともと、関西では神戸港や大阪空港の貨物に便乗して上陸してきたと考えられ、その後あじさい公園には、上を走る本四道路、第二神明高速道路を走るトラックのコンテナから落っこちてきて定住したのかもしれません。
アルゼンチンアリは、史上最強の侵略的外来アリと言われています。女王アリは一日に100個ほどの卵を産み、さらに働きアリを120匹産むごとに、新たな女王アリを1匹産むそうで、1カ月すると4万匹の大集団になります。在来のアリは単巣性と言って同じ種類のアリでも巣が違うと敵対しますが、アルゼンチンアリは多巣性で複数の巣(サイト)をアリが自由に行き来し、巨大な巣の固まりであるコロニーを形成します。すでにヨーロッパでは、イタリアからポルトガルまでが一つの巣でつながってしまっています。
日本では、広島県で初めて発見され、長年の努力の末に撃退されたそうですが、東京から西の本州で広く生息するようになり、神戸市では中央区や垂水区で蔓延しています。
ヒアリのように毒を持っていないので軽んじられていますが、次のような脅威をもたらします。
1.不快害虫としての被害
食べ物にたかったり、住居に侵入、徘徊することで住民に精神的ダメージを与える
2.農業害虫としての被害
果物、柑橘類などを直接的に、また、アブラムシやカイガラムシと共生して実を食い荒らし、病気をもたらす
3.住宅・施設などの社会インフラに被害をもたらし、資産価値を減じる
住宅のインターフォンや、エアコンの室外機の断線をもたらしたり、病原菌を媒介してキッチン、厨房の食品を不衛生にすることが考えられる
4.在来生態系を破壊し、多様性を減少させる
あじさい公園内でも、他の種類のアリが見られなかっただけではなく、草木が茂る秋の季節なのに、バッタなどの昆虫もほとんど見あたりませんでした。
あじさい公園で放置を続けると、水辺添いに福田川水系に拡がり、私たちの生活の重大な脅威となります。
アルゼンチンアリは冬眠しないとのことですが、これからの冬の時期は、活動が鈍ります。まずは、あじさい公園付近の住民に被害発生状況のアンケートを採り、生息範囲の把握と、脅威の啓発を行いたいです。活動が活発になる春先からは、福田川流域での生息状況を一斉観測して状況把握を行います。その一方で、本日、視察に来られた関係者や神戸市・兵庫県などの行政を巻き込み、防除対策を立案し、予算を確保し、実行に移すように動きたいと思います。
専用の駆除の薬が市販されています。1か月効果が持続し、通り道に5メートル置きに設置することが推奨されている薬剤が、10粒約900円と、なかなかの値段です。住民個別の対応や、一部地域だけの対応では、とうてい駆除にまで至れません。地域住民が行政や、専門家などとスクラムを組んで、面でアルゼンチンアリに対峙することが求められます。
来年度に向けて、福田川クリーンクラブの大きな活動テーマが一つ増えます。
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