素晴らしい秋空のもと「福田川さんぽ」を開催しました。学校行事などと重なって参加者が11名と少々少なかったですが、半日、アップダウンの約4.5キロ、約1万2千歩で、福田川上流の名谷・奥畑の知られざる旧跡や自然の散策を満喫しました。
参加者は朝9時に、名谷小学校山側にある「明王寺」境内に集合。いつも掃き清められている境内は今朝も清々しい雰囲気をたたえていました。明王寺は真言宗のお寺で、平安時代初期の創建です。普段の日としては特別に本堂を開けていただいて、本尊の大聖不動明王座像を拝観できました。
次に、同じ中山地区にある古刹の「転法輪寺」に向かいました。参道は照葉樹林で県指定の保護林です。大阪層群の地層が見えているところがあり、ここが太古の昔は海の底であったことが分かります。本堂の阿弥陀如来を参拝した後、寺務所に立ち寄りました。途中の広い境内には城を思わせる石積みの壁が展開していますが、直方体の石の積み方一つ取っても先人の工夫がうかがわれます。
寺務所では江戸時代に使われていた「籠」を見学しました。勅願寺を示す菊の御紋が入っているとのことで、お坊さんが本山の高野山との間を往復するのに使われたそうです。
次に向かったのは垂水でおそらく現存する最古の温泉の「柚耶の里」です。途中の高台から段々畑であった地形が目に入り、ここが河岸段丘であったことが分かります。
今日はあいにく、ボイラー交換工事中で建物の中に入れませんでしたが、ここが転法輪寺の参詣客を癒す「玉子温泉」と呼ばれる一大温泉(冷泉)であったことを、昔の写真を見せていただきながら、一同納得していました。
その次に向かったのは「奥畑公民館」です。辺りの様子は名谷の須磨ニュータウンの開発に伴い、私が子どもの頃(昭和30年代後半〜40年代前半)から様変りしています。公民館には、開発前の自然豊かな奥畑地区の貴重な写真や風景画、そして高度経済成長で賑やかなりし時代の奥畑地区の住民の皆さんの会合の様子の写真が飾られていました。
公民館の敷地には「修道記念碑」が立っています。明治時代末に奥畑地区と須磨を結ぶ道が整備されて、交通が画期的に改善した大事業を顕彰する碑です。その後訪れた、福田川の水源の泉は、昭和30年代後半に一帯に水道が引かれるまで、透明で良好な水質で住民の貴重な炊事、飲料の取水場所となっていました。古老からは、子どもの頃、泉から家に水を汲んで運ぶのが日課で大変だったとお聞きしています。今も、泉には水が静々と流れだし、付近の畑地の水路からも勢いよく水があふれ出てきています。奥畑地区ののどかですが厳しかった暮らしの様子が偲ばれます。
泉のすぐ近くには、室町時代創建の禅寺「石水寺」があります。今でも修行を積んでおられるお坊さんがおられるとのことで、境内には源平合戦の跡を伝える平師盛の墓と伝えられる石碑が移設されています。
奥畑地区の一番北側には謎のトンネルがあります。普段は鍵が掛かっていて、トンネルの中は真っ暗です。昔は滝ヶ谷川という川筋で、今はその上に盛り土されて神戸市営地下鉄の車両基地があります。そのトンネルを通って、山側の滝ヶ谷奥池と口池に皆さんを案内しました。敷地は神戸総合運動公園内にあり、公園管理の都合上、池の水利権者など一部を除き、市民の立入りができません。
池は雑木林の風景に囲まれています。ここが垂水区や須磨区の辺境で地下鉄総合運動公園駅から歩いて20分もかからないところにあると信じられません。市民の立入りが禁止されていることから、あらゆるため池にいる外来種のブラックバスやブルーギルは全くいません。池の中では、市街地と隔絶された自然環境を活用して神戸市により、淡水のブルーカーボンの実証実験が今も継続して行われています。
池からは、池を訪れる前に訪ねた奥畑地区に用水路がつながっていて、皆さんと一部を歩きました。測量技術も満足では無かった頃に、微妙な高低差を計算して小山の中腹に作られた水路の小径です。私が垂水の中でも最も好きな風景の一つです。付近で耕作が行われていないため、農薬に弱いタニシが大量に生息していて、貴重な自然環境です。
さんぽは、池から元来た道を奥畑地区に戻り、ニュータウン開発で暗渠になった福田川が顔を出す奥畑地区のダムを見学した後、昔、ニュータウンができる前に山陽の路線バスの終点であった奥畑大歳神社の鳥居の前で解散しました。
コース全般の解説は、福田川クリーンクラブ顧問で神戸市立工業高等専門学校都市工学科の宇野先生にお願いしました。また、垂水観光ボランティアガイドの池上さんほか、メンバーも参加されて、日頃の博識を参加者全員で共有させていただきました。各訪問先では、快く境内や施設を開放頂きました。おかげで普段観られない垂水の歴史的な施設、自然環境を堪能できました。ご協力頂きました皆さまには、感謝申し上げます。
垂水・福田川水系には、まだまだ知られざる魅力を秘めたところがあります。今後も、福田川クリーンクラブでは「福田川さんぽ」を継続開催する予定です。ご期待ください。































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